『あの子は貴族』

私的映画観
「東京カーストって実在することを再認識してみる」


シンプルに石橋静河が好きだからと、見ることにした「あの子は貴族」。東京を舞台にした映画は、国内外を問わずかなりの数を擁する。映画の中でも、東京というエリアにどれだけフォーカスを置くかは、もちろん映画によって大なり小なりだ。本作品はその中でも、だいぶ”東京”というものを意識させてくれる。

やはり一番印象的なのは、東京をレイヤー分けしてチャプターごとに物語がすすむところだろう。東京を舞台にさまざまな階層で生活をする人を描くさまがなんともわかりやすい。キラキラの東京に憧れ上京をして奮闘するもの、東京生まれのお嬢様、さらにその上をいく国を牛耳ってきたような名家の生まれの者、東京に生まれどそこには縛られないもの。近いようで決して交わらない層のものが、ふとしたきっかけで関わりを持ったときに生まれる感情をとてもリアルに感じられる。

その感情を顕著に感じたのが、映画後半の門脇麦と水原希子がマンションのベランダで安いパックのアイス棒を食べながら話すシーン。
「どこで生まれたって、最高って日もあれば泣きたくなる日もあるよ」。
なんて事のないこのセリフが、映画で描き続けた複雑なように見えて、実は無感情にレイヤー分けされた東京と、身を置き生きる人にとってはとても重要な事だと教えてくれる気がした。

一駅違うだけで、景色が一変する不思議なエリア、東京。その人の生まれた場所、今生活している環境で全くこの映画の受け取り方は違うのかもしれない。そこもまた映画らしく面白い。

本作品は、数多くある東京映画の中でもかなり上位に入る作品となったのでぜひ見てほしい。

あらすじ

東京生まれのお嬢様で、何不自由なく育ってきた榛原華子(門脇麦)。しかし、20代後半になり、恋人に振られたことで焦り始め婚活に奔走した彼女は、弁護士の青木幸一郎(高良健吾)と出会い運命の相手だと確信する。一方、地方出身で、名門大学入学を機に上京した時岡美紀(水原希子)。OLとして東京で働く彼女は、仕事ではやりがいを失い、腐れ縁の青木との関係にも行き詰まりを感じ始めていた。それぞれに息苦しさを抱えていたそんな2人が、ふとした出会いをきっかけに自らの生き方を見つめ直していく。

原作
山内マリコ
監督
岨手由貴子
出演
門脇麦
水原希子
石橋静河
高良健吾