私的映画観
「ブシェミの貧乏と、メチャクチャで魅力なストーリー」
これといって思い切り心に突き刺さるセリフもない。ストーリーはいわゆるアート系のインディーズフィルム。退屈な映画といえばそこまでだが、私には心に刺さった。
初めて観たのは、新宿にあるシネマカリテで35mmフィルムの上映期間をやっていたとき。その頃（今もだが）、とにかくスティーブ・ブシェミが好きで彼の作品を身漁っていたときだ。主役としての映画はめずらしく金のない学生時代で映画館に行くのを渋々としていた私も迷わず足を運んだのがなんとも懐かしい。
前置きが長くなったが、この映画の主人公はやはり日々を生き抜きながらなんとしても映画を作りたいスティーブ・ブシェミだろう。そして、そのブシェミの魅力を引き出すイケおじパトロン役のシーモア・カッセル。この2人の掛け合いこそ、この映画の真骨頂だとわたしは思う。
ボロアパート住まい一文なしのブシェミのTシャツのサイズ感、雑なスープ、貧乏にありがちな変なこだわり。そこに観ているこっちがヒヤヒヤする強引さとたまに鋭いことを言ってブシェミを困らせるシーモア・カッセルがさらにいい味を出してくれる。そして、今まで退屈さを極めていたのに、冗談みたいなラストシーン。ユニーク以上にふざけたストーリーにきっと脳みそを揺らされるはず。
これは、小話だがオダギリ・ジョーの”ジョー”は、シーモア・カッセルが演じたジョーを引用しているんだそう。さらに、これもふざけた話だがジム・ジャームッシュも演者として出ているのでぜひ見つけてほしい（笑）。
いいおじさん達が、真面目にふざけた感じにきっと心を掴まれるはず。
あらすじ
クリスマスのニューヨークを舞台に、映画作りに没頭する破産寸前の青年・アルドルフォ（スティーブ・ブシェミ）。隣に住んでいるアンジェリカをヒロインにいつか映画を撮りたいと夢想しているが、現実ではその日暮らしの生活に手一杯。そこへ突如、資金援助を申し出る怪しげな男ジョー（シーモア・カッセル）が現れ、いつもの日々が数奇なものへと変わっていく。
監督
アレクサンダー・ロックウェル
出演
スティーブ・ブシェミ
シーモア・カッセル
ジム・ジャームッシュ