大人向けの上質な紙芝居
「チャーリーとチョコレート工場」を執筆したロアルド・ダールの人気小説を、ウェス・アンダーソンが描いた本作。作品の時間は、39分と短く感じるがウェス・アンダーソンのポップな世界観に一気に引き込まれることになるはず。
原作を読んだことがあって、これをウェスが手がけると知った時、一体どうやって作品のテーマとなってくる”奇跡”を表現しつつ、原作のシックな雰囲気を出すのかと気になっていた。鑑賞してみるとかなり意外な印象を受けた。舞台のような演出で、淡々とストーリーの進行する様子が原作の大人っぽさを感じさせてくれる。さらには、ウェスアンダーソンの独特な色遣いがポップさを出していて退屈もしない。演劇と絵本を複雑かつ大胆に掛け合わせたような本作は、まるで大人のために作られた紙芝居のよう。
原作とここまで離れていて、原作に対してここまで忠実に描く。原作への挑戦とも取れるウェス・アンダーソンの魔法でしかで成せない妙技だろう。チャーリーとチョコレート工場を映画にしていたらどんな作品になっていたんだろうかと思わず夢想してしまう。
近年のウェス・アンダーソンの作品は、かなりストーリーや背景感が細かくより複雑さをま増していると感じる。あまり普段から映画を見ない人にとっては、眠くなってしまうこともあるかもしれない。だったら、2時間の映画ではなく、39分と手をつけやすい本作からウェス・アンダーソンをはじめてみるのも悪くはなさそう。
原作
ロアルド・ダール
監督
ウェス・アンダーソン
出演
ベネディクト・カンバーバッチ
レイフ・ファインズ
ベン・キングズレー