『メメント』

私的映画観
「ノーランが一貫して描く時間操作の真髄」

今回、紹介するのは私が愛してやまないクリストファー・ノーラン監督のデビュー作だ。(フォロウィングは処女作ということにしておく)。今や、「ダークナイト」や「インセプション」で名監督の名前を冠するノーラン。最近の映画も難解と言われることが多いようだが、デビュー作は段違いに難しい。一度見て理解した人とは、リズムが合わなくて筆者は仲良く慣れないだろう。

元は、ノーランの弟であるジョナサン・ノーランが執筆したプロットが元となっている。兄の存在で隠れがちだが兄弟揃ってど変態のご様子。

Memento(メメント)は「思い出せ」という意味。まさに映画の主題そのものだ。主人公は10分間しか記憶を保てない前向性健忘症を患ってしまう。忘れてしまうのが嫌で、他人も信じられないから、忘れたくないことを自分の身体に彫りながら妻への復讐を誓う・・・。そう、こちらも変態だ。

この映画は、時系列が逆向きに進行する「カラー」、時系列がそのまま進行する「モノクロ」に分かれている。「カラー」と「モノクロ」は順番に繋がっており、ある時点になるとそれが交わる。とまあ、説明してもきっと伝わらない。「メメント」のオススメの鑑賞方法は、一度普通に見て苦しむ→ネットで答えを見てみる→2度目の鑑賞でやはり苦しむ。それに個人的に思うのは、ノーランも明確な答えを出していない気がするのだ。時系列のせいなのか、カラーとモノクロが混ざっているからなのか、まるで夢の中にいるような気にさせられる。日々考察をしながら過ごす。久しぶりに見たりすると、こんな視点もあったのかと驚かされる。それが、時代に合わせながら、時系列を駆使して革新的に創り上げられたノーラン作品をいちばん楽しむ方法と私は思う。

ちなみに、メメントから最近の作品まで撮影監督を務める才人・ウォーリー・フィスターですらスクリプトを読んで、「話が全く理解できなかった」と後述しているので安心してほしい。

あらすじ

保険会社の調査員をしていたレナード(ガイ・ピアース)は、ある日強盗に襲われて妻を失い、さらには犯人との格闘で頭部を損傷し、10分間しか記憶を保てない前向性健忘症を患う。復讐の鬼と化したレナードは、体中にタトゥーを彫って記憶を刻みながら、犯人探しを始める。彼は自身の境遇と葛藤しながらも次第に犯人の正体を暴いていく。

原作
ジョナサン・ノーラン
監督
クリストファー・ノーラン
出演
ガイ・ピアース
キャリー=アンモス