『ダンケルク』

陰鬱で本当の戦争映画

クリストファーノーランの見事に時間というものを操っている1本。
しかし、この映画の様はきっと流行りに乗って見てしまいましたな人たちには相当退屈に感じるかもしれない。
「メメント」のように突飛な主人公がいるわけでもなく、「インセプション」のように派手に世界がひっくり返る世界へダイブするわけでもない。

本作では、ただただドライに戦争を記述し物語が進んでゆく。

そこには、主人公の内面の葛藤もなく、かっこよく叫び勇猛果敢に敵に向かってゆく物もいない。シーンは急に兵士が寡黙に撤退しているシーンから、始まりなぜこの経緯に至ったのかすら描かれない。

まず、この映画を観るにはダンケルクの戦いをちゃんと予習してからを勧めたい。
舞台は、第二次世界大戦のドイツ軍のフランス侵攻の最中の撤退戦である。

簡潔に言えば、ダンケルク作戦でイギリス軍は見事に撤退し、残存兵力を多く残すことに成功した。第二次世界大戦の戦局に大きく影響を与えたともされている。詳しくは、wiki先生に聞いて見ると良い。


鑑賞している時は、足掻き続け生き延びようと必死な姿にとても疲れることだ。
しかし、それこそノーランの狙いなのだろう。

戦争とは、ヒーローが出てきてかっこよく逆転する物でもなければ、死ぬ間際であれこれ言う余裕も、誰かのためにと動いたりなんてない。



それを痛感させられる写実的で陰鬱。そんな映画だ。


ものがたり

第二次世界大戦下、舞台はフランス北端の街ダンケルク。
イギリスとフランスの連合軍40万人が、ドイツ軍に追い詰められてゆく。
英仏軍は、民間船の協力のもと決死の救出作戦を決行。
陸・海・空とそれぞれの時間軸で若き兵士たちが生存のため戦う。


私的映画観
「陰鬱が楽しく見れる二つの理由」
ノーランの仕掛けと英国美男子

前半でも述べたがこれほど忠実だと緊張感で疲れて途中で見るのを諦めてしまいたくなる。
最後まで目を離さずに入れたのはやはり見出しの通りなのだろう。


まず、ノーランの仕掛け。
時間のイリュージョンである。この映画は陸・海・空とそれぞれ違う視点から描かれているが全て時間軸が違う。
見返してしまう理由はこれだ。空では1時間のことが、陸の海岸兵士達のシーンは1週間。それがうまくミックスされて一つの流れになっている。

まず、観ることだ。


そして、ノーランの実写へのこだわり。
出てくる軍艦や飛行機も全て本物、爆撃も。
そして撮影の舞台もなんとダンケルク海岸なのだ。だからこそ、この迫力とリアルな映像に目が離せなくなるのだろう。

映画を支える当時若手軍団の英国イケメン達にも注目したい。
この起用もノーランリアルに映像を表現するためである。ダンケルクの戦いでは、まだ戦争を知らない若者も多くそれを忠実に再現するため、当時のハリウッド作品では珍しく若手の起用が多かった。



作中でも、民間船で救出しにいく
マーク・ライアンスが
「我々の世代が戦争を始め、
子供を戦場に送ってしまった」
と自戒するシーンが印象的である。


監督
クリストファーノーラン
音楽
ハンス・ジマー
撮影
ホイテ・ヴァン・ホイテマ
出演
フィン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
マイケル・ケイン