『トニー滝谷』

小説を読むように、
孤独を考える映画

記念すべき第一弾は、私が邦画の中でも抜群に邦画らしく感情をモヤモヤとざわつかせる作品の一つだ。
登場人物はほぼ2人。

邦画らしく、特に目立つ起承転結はないまま物語は横に流れて行く。
イッセー尾形の感情がうまく表に出てこない表現と、宮沢りえの抜群に透明感のある演技に魅了されいつもは眠くなる邦画もなんだかあっという間に時が過ぎる。

前の文で、起承転結はないと書いたが映画を見て次の日にもう一度考えてみると、そんなこともなかったような。

色々な孤独について考えさせられる。
1人だと心がいい意味でも絞られるような、観る人でも感じ方が違うそんな映画だ。

ものがたり

トニー滝谷と名付けられ、そのせいで幼少期から孤独な環境に育った男(イッセー尾形)が中心で話が進んでゆく。
少年時代から1人が故に、トニー滝谷は孤独を感じていなかった。

友人や彼女もつくらず黙々と細密画を職としていたトニー滝谷だが、ある1人の女性(宮沢りえ)と出会う。
そこで初めて孤独というもの、孤独である寂しさを知るようになる。

彼女の服への執着やトニー滝谷の孤独との向き合い方を見ながら物語は進んでゆく。

私的映画観
「宮沢りえに最強の装備を」

とにかくこの映画、宮沢りえが最強である。
確かに孤独の映画であり、起承転結をはっきり見せないいかにも邦画らしさとして美しさがある。
しかし、その映画を作り上げるには、作品のシンプルさからは離れた豪華さがあるかである。

原作は村上春樹の短編小説
監督が市川準
語りは西島秀俊
サウンドに坂本龍一
うん、これだけでかなり惹かれる。

ただ、この全てが映画で出てくる宮沢りえを支えるいわば装備になってしまう。
それくらい窮屈や孤独というもの、その美しさに今にも壊れそうな演技をする彼女が創られ脳裏に焼き付く。

結果、色んなものが作用しあって孤独を感じ取れやすくなっている作品だった。

監督/脚本
市川 準
原作
村上 春樹
音楽
坂本龍一
出演
イッセー尾形/宮沢りえ
ナレーション
西島 秀俊